11月のコラム 2021年11月
雑感<その12>
前回に続いて薄幸な少女<ミニョンの歌4曲>をテーマに述べてみたい。F.シューベルトの作品とH.ヴォルフの作品に於ける「Mignons Gesang」、この楽曲を下記歌唱者4名のプログラム構成をCDから抽出してみた。彼ら歌唱者がミニョンの境遇を、そして繊細な感受性を如何にとらえているか、そしてF.シューベルト及びH.ヴォルフの音楽を如何に歌っているか、彼らのプログラム構成と詩の大意を参考に感じてみよう。
F.シューベルト作曲
歌唱者:クリスタ・ルードッヴィヒ(アルト)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-4 ただあこがれを知るひとだけが
(挿入曲あり)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D321 ご存じでしょうかレモンの花咲くあの国を
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-2 語れとはいわないで、黙っているがよい
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-3 もうしばらくこのままに
「Mignons Gesang」歌唱者:グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D321 ご存じでしょうかレモンの花咲くあの国を
(挿入曲あり)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-2 語れとはいわないで、黙っているがよい
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-3 もうしばらくこのままに
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 D877-4 ただあこがれを知るひとだけが
「Mignon・Harfner」(D877-4の詩によるミニョンと老竪琴弾きが歌う)二重唱」D877-1
歌唱者:エリーアメリング&ディートリヒ フィッシャー=ディースカウ
H.ヴォルフ作曲
歌唱者:エリザベート・シュワルツコップ(ソプラノ)
「Mignons Gesang Ⅰ」ミニョンの歌Ⅰ 語れとはいわないで、黙っているがよい
「Mignons Gesang Ⅱ」ミニョンの歌Ⅱ ただあこがれを知るひとだけが
「Mignons Gesang Ⅲ」ミニョンの歌Ⅲ もうしばらくこのままに
(挿入曲あり)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 ご存じでしょうかレモンの花咲くあの国を
歌唱者:アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メッゾ ソプラノ)
「Mignons Gesang Ⅰ」ミニョンの歌Ⅰ 語れとはいわないで、黙っているがよい
「Mignons Gesang Ⅱ」ミニョンの歌Ⅱ ただあこがれを知るひとだけが
「Mignons Gesang Ⅲ」ミニョンの歌Ⅲ もうしばらくこのままに
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 ご存じでしょうかレモンの花咲くあの国を
大意(大意のプログラム構成については、筆者の意図を示してみた)
「Mignons Gesang」ミニョンの歌 ご存じでしょうかレモンの花咲くあの国を
ご存じでしょうか、レモンの花咲くあの国を、
繁った葉かげにオレンジが実り、
紺碧の空からは爽やかな風がそよぎ、
ミルテの木はひっそりと、月桂樹は高く生い立つ国。
あの国をあなたはご存知でしょうか?
その国へ!その国へ!
あなたと一緒に行きたいのです、ああ、愛する人よ。
ご存じでしょうか、円柱が支えるあの家を
広間は華やかに、居間は落ち着き
大理石の立像が私をやさしく見つめて、
可愛そうな子よ、お前になにをしたのだ、と。
あの家をあなたはご存知でしょうか?
その国へ!その国へ!
あなたと一緒に行きたいのです、ああ、愛する人よ。
ご存知でしょうか、雲に包まれた山あいの小道を
ロバが霧の中喘ぎ行く山道、
太古の洞窟には大蛇が住み、
そそり立つ巌、その巌から落ちる滝、
あの山をあなたはご存じでしょうか、
その国へ!その国へ!
さあ、一緒に行きましょう、ああ、父なるひとよ!
「Mignons Gesang Ⅰ」ミニョンの歌Ⅰ語れとはいわないで、黙っているがよい
語れとはいわないで、黙っているがよいと言い付けてください、
秘密を守るのが私のつとめなのですから。
胸に抱いているもの全てをお見せしたいのですが、
許されないのが私の運命なのです。
時が来たら、明るい太陽の光が暗い夜を払い
その秘密が明るむにちがいありません。
かたい巌でさえその胸をひらいて
深く秘めた泉を地にそそぐことでしょう。
私たちは親しい人の腕の中に憩いを求め
歎きを打明け心の悲しみを癒すことができるのです。
心の誓いが私の唇をかたく閉ざしているのです。
それをあけさせることのできるのは神様だけなのです。
「Mignons Gesang Ⅲ」ミニョンの歌 Ⅲもうしばらくこのままに
もうしばらくこのままの姿でいさせてください、
この白いロープを脱がさないでください、
この美しい地上から、あの暗い世へ
私は急ぎ足でおりて行くのです。
あの暗い世でしばらくの間じっとしていれば
やがて新しい目覚めに慣れるでしょう。
そうしたら、私はこの清らかな着物も
帯も冠も要らなくなるのです。
あの天上のひとびとたちは
男女の区別なく身体は浄化され
もう衣服もロープもまとうこともありません。
世の苦労もなく生きてきましたが、
深い苦しみだけは深く味わいました。
その悲しみのために余りに若くして老けてしまいました、
今一度、永遠の若さを私にお与え下さい
「Mignons Gesang Ⅱ」ミニョンの歌Ⅱ ただあこがれを知るひとだけが
ただあこがれを知る人だけが
私の悩みごとは分かりません。
ただひとり、すべての喜びから離れて
はるか彼方の天空を仰ぎます。
ああ、私を愛し知るひとは
遠いところにいるのです。
眼はくらみ、胸は燃えています。
あこがれを知る人だけが
私の悩みごとは分かりません。