(7月30日の参加者より)
まず簡単に、H.ヴォルフの人となり、そしてイタリア歌曲集について説明の後、プログラムにそって進講されました。 他の歌曲集は短期間で集中的に作曲したヴォルフですが、このイタリア歌曲集だけは、長いブランクをはさんで作曲され、2巻に分かれているそうです。中断の間にはオペラや弦楽四重奏など他の分野の曲を書いているので、2巻の方の曲はオペラティックだったり、もし彼が健在ならばオーケストラ用に編曲したかったのではないか、ということでした。 私のプログラム“Auch
kleine Dinge”は、ご存知の通り、イタリア歌曲集の冒頭を飾る曲ですが、本当は一番最初に作曲されたわけではなく、この曲の持つテーマ(小さなものにも素晴らしいものがある)が、この歌曲集のテーマでもあるという重要な意味を含んでいるため冒頭に置かれています。したがって、特にリート的で非常に美しく、一音一音の変化を感じながら弾く。 具体的には、左手のトップの音が一番重要であること(下降音階を作っている)、また裏拍の音を弾くときに、決して念押ししてはいけない(竿ささない)、ただ置いて行くだけ、そうすると歌が流れ始めると。何度も先生が見本を示してくださって、間近に見ることが出来たのもとても勉強になりました。歌う側も立派な声で堂々と歌うだけでなく、本当に一つ一つの言葉を慈しむように大切に歌うということが、この曲の持つ柔らかさやsehr
zartという表示につながると思いました。 テンポ感について、私は少し迷いがあったのですが、色々なことを総合して弾いてみると、しっくりいくテンポがやはりlangsamだということも納得できました。 また、全体へのコメントとしては、イタリア歌曲集は、ピアニストにとっては色々な表現の工夫が出来たり、とても弾きがいのある曲ばかりで勉強になるし、ダイナミクスの差をもっと思い切ってつけると良いとも言われました。伴奏という役割についてのお話もありました。 非常に和やかで楽しい雰囲気の中で、密度の濃いレッスンをしていただけたこと、また、そのような場を用意してくださった運営委員の方々に感謝いたします。
(三枝美佐)
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