12月7日例会の受講者より
12月の例会は「オラトリオ」を題材にバリトン歌手・渡邊明先生によるレッスンだった。最初に「オラトリオとドイツ・リートとの違い」について講演があった。ゲーテの象徴的な言葉「クラシックは健康人である。ロマンティックは病人である」に始まり、「音楽が先か、言葉が先か」の究極なテーマについて語られ、「オラトリオはリートと違い“音と形式”を踏まえたものでなければいけない。Ichではなく、ある事実を史実や物語を的確に表現する三人称の音楽である。理想は夏目漱石の『草枕』にある「情三分芸七分」の配分であり、これができる人が正しい語り部である」と前置きした後で、ヘンデル、バッハ、ハイドンのアリアの順でレッスンに移った。
作品の解説をしながら受講生にはテキストを正しく読み端正に歌うよう指導された。「芸」を代表するメリスマについてもただ軽く機械的に歌うのではなく、「心臓の鼓動」を感じながら歌う。装飾音符やカデンツも小さい音符だから小さく歌うのではなく、正確にはっきり丁寧にと言われた。「音と形式」というと機械的なものを連想しがちだが、指導を受けるにつれ、メリハリが出てきて、どんどん彫りのあるアリアになっていった。これが「情三分」の「落としどころ」なのかと大変実りある充実した時間を送ることができた。
(室井千晶) |