2月15日の例会の受講者より
本例会では「ヴェルレーヌの詩による同詩異曲」というテーマで行われた。
3名の受講者が「月の光」「グリーン」「マンドリン」から、フォーレ、ドビュッシー、アーンの作品を年代順に歌い、武田正雄先生が1曲ごとにコメントされた。
はじめにヴァトーの絵を見ながら「月の光」の冒頭「votre ame」のvotreは画家ヴァトーを指すとし、歌う前に時代背景や文化の理解が欠かせないといわれた。続いて、フランス語の発音、歌いまわしなど技術的な指導に加えて、作風の違いが説明された。例えば楽譜にアクセント、スラー、テヌート、強弱、速度指示を几帳面に付けるドビュッシーに比べ、フォーレはフレーズが長く、伴奏が小刻みであっても歌い手はレガートで歌う。ニュアンスを出すために歌い手の判断でスラーやテヌートを加える。これはサロンという限られた世界で作曲し、自身で伴奏していたフォーレにとって、指示なしでも歌い手はやってくれるといったバロック時代と共通した常識があった。まして100年後に日本人が歌うことなど思いもよらなかっただろう。
ドビュッシーの難しさは目に見えるところにあるが、フォーレは見えないところにあるといった話は興味深かった。
一方、アーンの作品はシンプルさの中に時折フレンチカンカンのような装飾音符があって新しい時代を感じるが、実は年齢はさほど変わらない。それどころか前の2名と違って、音符が少ない分、言葉しか頼りにならない。その代わり大事な言葉や音節には必ずテヌートやアクセントが付くなど言葉の扱い方が絶妙である。スゼーは「フランス歌曲はフォーレからではなくアーンから勉強するのが良い」と話したそうだが、これから注目すべき作曲家であるとしてチャレンジングな例会は終了した。
(室井千晶)
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